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調査官のノルマと評価

「税務署の調査官は、ホント無理やりでも追徴税額を持っていこうとしますよね」

税務調査を何度か経験したことがある社長なら、みんな思っていることでしょう。

ここで気になるのは、調査官のノルマです。
「車のディーラー営業マンに販売台数のノルマがあるように、調査官にも追徴税額のノルマがあるのかな?」
と疑いたくなる気持ちはわかります。

さて、実際のところ、調査官に追徴税額のノルマはありません。
「今年は○百万円」の追徴税額を課してこい!」とは言われていないのです。

しかし、調査官にノルマがないわけではありません。
「追徴税額にはノルマがない」のであって、ノルマは存在します。
それは、「税務調査の件数にノルマ」があるのです。

調査官は1年間を通じて税務調査を行っていますが、その間に、30件程度のノルマを課せられています。
このノルマを達成できないと、まさに税務署内で問題なるのです。

1年間は52週ありますが、休みなどを除くと、働いている週は実質35~40週程度ですから、
1人あたりの調査官で、1週間に1件の税務調査を実施しているイメージでしょうか。

なぜ調査官に、税務調査の件数ノルマがあるかといえば、税務調査の実地調査率を上げるためです。

「最近の税務行政の動向」
http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/shingi-kenkyu/shingikai/110303/shiryo/pdf/04.pdf
の6ページもある通り、国税は実調率(実地調査率)を公表しています。
実調率とは、税務調査をすべき全体件数のうち、1年間でどれだけの税務調査を実際に行ったのか、率で算出したものです。

この資料にもある通り、法人の実調率は4.6%となっています。
つまり、現在は税務調査をあまり行えていないため、
平均すると20~25年に1回しか税務調査に来ないというわけです。(もちろん平均の話です)

これでは課税の公平性を守れません。
なぜなら、税務調査にあまり入らないことがわかれば、真面目に申告・納税する人の数は減るからです。

そのためにも、調査官にそれぞれ税務調査件数のノルマを与えることで、実調率を上げようとしているのです。

「調査官には追徴税額のノルマがないのであれば、あんなに無理やり追徴税額を課そうとしなくてもいいのに・・・」
社長がこう思うのも当然でしょう。

さて、これにはノルマ以外のカラクリがあるのです。
税務調査で調査官は件数のノルマを負っているのですが実は、「評価」は別に行われています。

調査官も公務員というサラリーマン。
他の国家組織と違うのは、完全な年功序列で昇進昇格するのではない、ということです。

調査官は、今まで担当した税務調査でどれだけの増差所得(税務調査前と後で、利益の金額がどれだけ変わったのか)で評価されており、
その金額が大きければ大きいほど昇進昇格が早くなり、出世できるのです。

実際に国税組織では、明らかに年下の上司(統括官といいます)が、年上の部下(調査官)を使っているのを目にすることができます。
出世の早い調査官は、今まで多額の増差所得を発見し、課税してきたのです。

調査官の評価はもう1つあります。それは「不正発見割合」です。
簡単にいうと、悪いことをしている=脱税している会社を見つけた割合なのですが、
具体的には、重加算税を課した割合です。
税務調査を10件行い、3件重加算税を課したとすると、30%の不正発見割合ということになります。
この不正発見割合が高い調査官も評価され、早く出世することができます。

ここで注意が必要なのですが、出世に燃える調査官ほど、無理やりでも誤りを発見したり、特に不正を発見しようとします。

しかし、実際には誤りがなくても
「これは経費にできませんね」
「これは売上の計上時期がズレていますね」
と平気で言ってくることもあります。
本当に誤りがあるのであれば、当然修正すべきですが、誤りもないのに無理やり指摘してくることに対しては、断固として反論すべきです。

また昔から、「税務調査ではお土産が必要」と言われます。
お土産とは、税務調査で何も誤りがない場合に、調査官としては税務署に帰りづらくなってしまうので、
わざとこちらから誤りの箇所を調査官に教えてあげる、また本当は間違っていないのに、修正申告をしてあげる行為を指しています。

確かに調査官は、誤りを見つけて評価されているわけですから、確かに何も誤りを発見できなければ、気まずい思いをしているのでしょう。
しかし、これでは何のための税務調査かわかりません。
調査官の評価など気にする必要はありません。お土産を渡すことなど考える必要などないのです。

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