税務署の調査官は、毎日のように税務調査をするのが仕事です。
調査官は公務員ですから、一般企業よりもきつく管理されていることは間違いありません。
調査官には税務調査のノルマが与えられています。
通常「調査官のノルマ」と聞くと、追徴税額のノルマだと思われがちですが、違います。調査官のノルマは「税務調査の件数」なのです。
つまり、これだけの期間で○○件の税務調査をしなければならない、と決められているのです。
調査官には税務調査の件数ノルマが課せられているということは、
調査官側の心理としては、税務調査1件1件に時間をかけることができないということでもあります。
一方で税務調査というのは、1件1件にかかる時間はバラバラなのが現実です。
時間がかかる調査もあれば、あっさり終わる調査もあるのです。
これは、調査官が調べたいことが不明であればあるほど、結果として長引くことになりますし、
当然脱税などをしている納税者に対する調査は数ヶ月かかることもあるのです。
こう考えると調査官も、事前には1件の税務調査でどれだけ時間がかかるかわらかないですし、
少なくとも調査をする前は「件数のノルマをこなすためには、時間がかからない方が嬉しいな」と考えているのが普通なのです。
ここまでの前提を踏まえると、税務調査の対応も変わってきます。
まず、税務調査は通常事前に連絡があるのですが、この段階で調査の日数が長いと感じた場合の対応です。
例えば、以前は2日の税務調査だったのに、事前の予約段階で3日だと言われた場合、
「前回は2日でしたよ。その頃から会社の規模等も特段大きくなってはいません。とりあえずは2日でいいではないですか?」
と切り返してみることです。
このようにこちらから主張してはならない、と思い込んでいる経営者の方も多いのですが、
実際のところ調査官も税務調査の日数は少ない方がいいのですから、思惑さえ合致すれば、
「では2日にしましょう」と合意できるケースが多いのです。
また、税務調査を嫌う気持ちはわかりますが、税務調査が長引くことの方が嫌かと思います。
税務調査は時間的負担とともに、精神的負担もかかるものです。
税務調査を嫌う気持ちを抑えて、当初から調査官に誠実に対応することで、税務調査が早く終わる可能性が高くなります。
これは何も媚びへつらう、ということではありません。丁寧に対応すれば、結果的に調査が早く終わるのです。
しかし、たまになのですが、異常に長引く税務調査があります。
通常、税務調査というのは、
・2~3日間の日程(会社の規模によって変わります)
・その中で不明点等があれば、提出する必要がある
・最終的な可否を別途協議する日程(来社か税務署に行く場合もあり)
・修正申告書の提出など
の流れになります。
ですから、当初2~3日だけ見越しておけば、そのあとは流れによって変わるのですが、
それでも1~2日で終わることが多いのです。
しかしケースによっては、2~3ヶ月かかることもあるので、経営者としてはたまったものではありません。
確かに、担当の調査官も1件の税務調査だけを担当しているわけではなく、
さらに上司からの指示などもあることは容易に理解できます。
しかし、たいした問題点がなくても2~3ヶ月かかる税務調査があるのですから、不思議といえば不思議です。
調査官の事情はともかくとして、税務調査を受ける方としては、期間を不当に延ばされていいことなど1つもないのですから、
特殊な事情がない場合は、調査官に電話連絡等をして「早く終わらせて欲しい」旨の主張をすることが大事なのです。
法律上は「○○日以内に税務調査を終わらせなければならない」という法律はありません。
しかし、税務調査が長引くことで、会社・経営者に本業への支障があることは確実です。
そこで、この法律があることは知っておいた方がいいでしょう。
国家賠償法第1条
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
この法律にある「他人に損害を加えたとき」には、
税務調査が長引くことにより、事業に損害が発生したり、経営者に精神的被害があることまでを含んでいます。
法律を根拠に「不当性」を主張すれば、長引く税務調査を終わらせることも可能なのです。