平成25年1月1日以降に行われる税務調査から適用になる税制改正で、最低限知っておくべきポイントに絞って解説したいと思います。
なお、法律に改正にともなって、国税庁より一般納税者向けにわかりやすく解説したサイトが公開されていますので、
詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。
「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
またこのサイトに、「今般の改正は、税務調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め、
調査に当たって納税者の方の協力を促すことで、より円滑かつ効果的な調査の実施と、
申告納税制度の一層の充実・発展に資する等の観点から、調査手続に関する従来の運用上の取扱いを法令上明確化するものであり、
基本的には、税務調査が従来と比べて大きく変化することはありません。」と記載あるとおり、
今までの税務調査と何かが根本的に変わったというわけではありません。
さて、まず知っておくべきことは、同じ修正申告を提出することになったとしても、
加算税(通常は10%)が課されるかどうか区分が明確になりました。
つまり、税務調査の結果として誤りが見つかり、修正申告するのであれば加算税が課されますが、
(税務調査ではなく)税務署からの電話などにより誤りを指摘されて、修正申告を提出することになった場合は、
加算税が課されないのです。
今までは、実務上税務調査ではなくても、税務署からの指摘に基づくものであれば加算税が課されたケースが多かったのですが、
今後は税務調査なのか、そうではないのかによって取扱いが明確に区分されるのです。
とはいえ、税務署から突然電話などが入って、「誤りがあるので修正申告してください」と言われても、
それが税務調査の範囲なのか、そうでないのかはわからないと思います。
そこで今後のルールは「税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を行う際には、
具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者の方に明示することとしています。」となり、
税務署側が区分を伝えるということになりました。
税務署から連絡があれば、どちらなのかきちんと聞いておかなければなりません。
最近は、会計ソフトへの入力だけではなく、取引先との請求書等のやり取りもメールで行われることが当たり前となっています。
以前の税務調査では、膨大な紙の資料を調査官に提示することもありましたが、昨今はペーパレス化の影響で紙の提示が減っています。
しかしここで、税務調査において新たなトラブルが起ることもしばしばあります。
たとえば、調査官が「請求書など取引先とのやり取りを電子で行っているのであれば、
パソコンを触らせてください」と要請してくるようなケースです。
ここで調査官にパソコンを貸してしまうと、ヒドいケースでは「ファイル復元ソフト」などをインストールされることまであり、
税務調査でここまでやっていいのか?というトラブルが発生することもあるわけです。
以前はこの点については、何も規定がないため、何が正しくて何が悪いのかの切り分けが不明確だったのですが、
国税庁のサイトでは、その区分が明示されました。
質問:「提示・提出を求められた帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、どのような方法で提示・提出すればよいのでしょうか。」
回答:「帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、提示については、その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にしてお示しいただくこととなります。一方、提出については、通常は、電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものをお渡しいただくこととなります。また、電磁的記録そのものを提出いただく必要がある場合には、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合もありますので、ご協力をお願いします。(注) 提出いただいた電磁的記録については、調査終了後、確実に廃棄(消去)することとしています。」
このように明記されたことで、
・パソコン自体を調査官に触らせる必要はない
・原則として必要なデータを画面で見せればいい
・プリントアウトが必要な場合もある
となりましたので、調査官がパソコンを触りたいと言っても「画面で見せます」と切り返すことができるのです。
・帳簿書類の預かりと返還
調査担当者は、税務調査において必要がある場合には、納税者の承諾を得た上で、提出された帳簿書類などをお預かりします。
その際には、預り証をお渡しします。また、お預かりする必要がなくなった場合には、速やかに返還します。
⇒平成24年までの税務調査でも実務上は実施されていましたが、平成25年から法定化されました。実態は以前と変わりません。
・調査結果の説明と修正申告や期限後申告の勧奨
税務調査において、申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、
調査結果の内容(誤りの内容、金額、理由)を説明し、修正申告や期限後申告(以下「修正申告等」といいます。)を勧奨します。
また、修正申告等を勧奨する場合においては、
修正申告等をした場合にはその修正申告等に係る異議申立てや審査請求はできませんが更正の請求はできることを説明し、
その旨を記載した書面をお渡しします。
⇒平成24年までは税務署側に「説明義務」がありませんでしたので、どの項目に誤りがあって、
なぜ、その金額がいくらになるのか説明を受けられない場合もありましたが、
平成25年以降は修正申告を提出する(つまり、税務調査で誤りがあった)場合は、税務署から詳細は説明をしてもらえるようになりました。
税務調査に関するもの以外にも、大きな改正がありました。
それは、「更正の請求の期間が5年になった」ことです。
税務調査に直接関係ありませんが、非常に大事なことなので、説明しておきたいと思います。
「更正の請求」とは、提出した税務申告書に間違いがあって、本来より多くの税金を申告・納付している場合に、
「納めすぎの税金を還付してください」という手続きをいいます。
ちなみにこれとは逆に、本来より少ない税金しか申告・納付していない場合に提出する書類を修正申告といいます。
以前は、「更正の請求」と「修正申告」の年分はこのように決められていました。
更正の請求:1年
修正申告:5年(脱税などの場合は7年)
これはちょっとおかしいですよね。
同じ間違いがあっても、税金が増えるなら5年さかのぼれるのに、税金が減るなら1年しか適用できないわけですから。
この不平等が解消されることになりました。更正の請求の期間が5年になったわけです。
ただし、更正の請求をするのに、新たな条件が加えられました。
①更正の請求が5年できる年分
更正の請求が1年しかできない、5年できる区分はどこにあるかというと、
「平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する」ものです。
例えば、3月決算法人であれば、平成24年5月末日(3月末から2ヶ月後)に申告期限がくるものについては、
その日から5年以内であれば更正の請求をすることができますが、平成23年5月末日に申告期限があったものについては、
1年しか更正の請求ができません。
②証明する書類の提出
今後は、「更正の請求」をする理由の基礎となる事実を証明する書類を添付しなければなりません。
③罰則
わざとウソの更正の請求をして、税金の還付を受けようとした場合に備えて、新たに罰則ができました。