税務調査を何度も受けると、調査官はどのようなものを、どのような流れで見ていくのか、
だいたいのところを把握することができるようになります。
しかし実際のところ、そう何度も税務調査を受けたことがある経営者はいないもの。
今回は税務調査で、調査官が見ているものを解説します。
まず税務調査が始まると、「事業概況」のヒアリングから入る場合は多いです。
つまり、会社を設立した経緯や現在の事業の内容等を、調査官が概略的に把握したいのです。
ここは税理士ではなく経営者の出番なのですが、調査官はこの場面で経営者の人柄・性格を把握しようともしています。
税務調査は確かに、会社の数字をチェックするのですが、あくまでも人対人の関係性の中で行われるものなのです。
こちら側としても、調査官の人柄や性格によって対応が変わるのと同じように、調査官もこちらのことをチェックしているのです。
さて次は、調査官が帳簿のチェックを始めます。
調査官が持っている資料は、あくまでも税金の申告書だけ。どのような計算過程でその申告書ができたのかはわかっていません。
これを帳簿から把握しようというわけです。
帳簿は主に「元帳(もとちょう)」と呼ばれるものをチェックするのですが、このあたりは税理士が整理しているので大丈夫です。
ここで普段から準備しておくべきことが2つあります。
①帳票類の整理
調査官は帳簿を見ながら税務調査をしているのですが、ここで間違いなく提示を求められるのが帳票類です。
帳票類とは原始資料とも呼ばれるもので、請求書や発注書、領収書や契約書のように、
売上や経費を計上する基となった資料のことです。
取引先からの請求書や発注書・見積書などはメール等の電子データの場合も多いですが、
調査官に提示を求められたらすぐに提示できる状況にしておく必要があります。
間違っても「探しましたがありません」では通りません。
②経理処理の流れ
どういう流れで売上を計上しているのか、
たとえば、取引先に見積もりを提示し、先方から受注した段階で請求書を発行してから売上計上など、
経理処理の流れを明確に説明できる資料があればいいでしょう。
調査官が帳簿・帳票類のチェックをしながら、同時にチェックしていることがあります。
①経営者や従業員の発言
数字をいくら眺めても、調査官は誤り発見することはできません。
そこで、経営者や従業員にヒアリングしながら、端緒(誤りのきっかけ)を見つけようとするのです。
調査官との会話も、余計なことを言うと痛い目にあうこともありますので注意が必要です。
②会社に余計なものを置かない
調査官は会社に置いているものをチェックしています。
具体的には、銀行からの贈答されたカレンダーがあって、その銀行と付き合いがなければ、
「その銀行に隠し口座があるのでは?」と疑われるわけです。
また、ゴルフバッグを社内置いている経営者の方もいますが、調査官からすれば格好のネタです。
「社長、ゴルフ好きなんですか?」から始まり、プライベートのゴルフ代が経費になっていないかチェックされることになります。
③辻褄が合わないことはやらない
法人で所有する車を、役員等がプライベートでも使用していると指摘されるケースが多くあります。
実際には仕事での利用がほとんどで、たまにプライベート使用であれば問題ないのですが、
実態が主にプライベートと認定されると経費になりません。
ここでいくら「ほとんど仕事で使っています!」と主張しても、
車が常に自宅の駐車場にとめられているとか、仕事で使う理由がない、となってくると厳しい状況に陥るわけです。
誰が考えても辻褄が合わないようなことは、税務調査で指摘されるものと考えておいた方がいいでしょう。
④個人と法人を明確に区分しているか
接待交際費などで指摘されることが多いのですが、
経営者個人の支出が会社の経費に入っていないかは、絶対にチェックされるポイントです。
「個人で負担している(法人で経費にしていない)飲み代・ゴルフ代もあって、それはこういう基準なんです」
と説明できれば完璧でしょう。
そこまではできなくても、どの取引先と行ったのかくらいは説明できるようにしておきたいものです。