税務調査で税金の計算に誤りが発見された場合、「法的には」2つの終わり方が存在します。
1つは「修正申告」で、もう1つは「更正」というものです。
この2つには違いがあるのですが、現実的には税務調査のほとんどが、修正申告で終わります(あくまでも誤りがあった場合です)。
では、なぜ修正申告で終わるのでしょうか?
そもそも、修正申告と更正の違いは何なのでしょうか?
まず、修正申告と更正の違いを確認しておきましょう。
【修正申告】
税務調査の中で、調査官の指摘に納得し、自ら誤りを認めて提出するもの
【更正】
税務調査の中で、調査官に否認指摘されたが、納得できないので修正申告を提出しなかったところ、税務署側から処分されるもの
ここで大事な点は、修正申告は「自ら提出するもの」であり、一方、更正は「税務署からの処分」ということです。
「処分」と聞くと、何か悪いことをやったかのように感じますが、実際には更正されたからといって、
以後税務署から不利益な取り扱いを受けるわけではありません。
あくまでも、見解の相違があり、それが最後まで埋まらなかったというだけです。
また、修正申告と更正では、支払うべき追徴税額も同じです。
調査官の否認指摘が全部で100万円だとすると、修正申告でも更正でも、
同じ100万円を支払うことになりますし、加算税や延滞税の金額も同じになります。
ということは、税務調査を受ける側からすると、修正申告と更正では、どちらが不利ということはないのです。
ただ、1点だけ違いがあります。
それは、不服申立てをできるかどうかです。不服申立てとは、税務署からの処分に納得できない場合、
裁判の前段階で税務署もしくは国税不服審判所に訴えを起こすことをいいます。
修正申告は、自ら納得して提出するものであるため、救済措置である不服申立てはできませんが、
更正の場合は、税務署からの処分であるため、処分内容に納得できない場合、不服申立てすることができるのです。
実は逆の立場から考えると、税務調査で誤りがあった場合に、修正申告を出してほしいのは調査官(税務署)の方なのです。
調査官が修正申告を提出してほしいと考える3つの理由を挙げます。
①不服申立てが前提となっている
更正(処分)をすると、かなり高い割合で納税者から異議申立てが行われます。異議申立てとは、更正処分をした(つまり税務調査をした)税務署に出されるもので、税務調査を担当した調査官とは違う調査官が実質審理(再調査)を行わなければなりません。つまり、税務署からすると税務調査の二度手間ということで、事務量が増えるのが実態なのです。
②附記すべき理由が曖昧
税務調査において調査官が否認指摘をしたものの、その根拠が非常に曖昧であることが多くあります。税務調査の結末が修正申告の提出ということであれば、その根拠がいくら曖昧でも、「納税者が納得して提出するもの」である以上、問題にはなりません。しかし、更正となると、否認根拠を法令等で明確にしなければなりません。実は税務署側からすると、附記すべき理由を挙げるが最も難しいことなのです。
③税務署内の手続きが面倒
納税者が修正申告を提出すれば、基本的に調査官が上司(統括官)の決裁を得るだけで税務署内の手続きは終了します。しかしこれが更正ということになると、これほど簡単な手続きではありません。更正をする場合、金額にかかわらず税務署長の決裁が必要になります。調査官は、統括官・副署長・署長と3人の決裁を必要とし、税務署内の手続きが非常に面倒であるため、調査官がやりたがらないのが実情なのです。
このように、税務調査で誤りがあった場合、そのほとんどが修正申告で終わるのは調査官側の要請なのです。
もちろん、税務調査の中で調査官の否認指摘に納得したのであれば、修正申告を提出する方が望ましいことは事実です。
その方が税務調査は早く終わるのですから。
しかし、納得もせずに修正申告を提出することは危険だということがおわかりいただけたかと思います。
ぜひ、この違いを理解して税務調査に臨んでいただきたいと思います。