税務調査で多い指摘が、
「交際費が同業他社と比べて多額なので、半分にします。」
「交際費に私的な支出が入っているので、30%削ります。」
といったものです。
本来税務調査とは、「この支出は社長個人の支出ですから、経費(損金)になりません。」など、
個別に「これはいい」「これはダメ」と言われるものです。
しかし、個別に指摘するのが面倒なのか、調査官はよく「〇〇%は経費になりません。」と指摘してくるものです。
さて、この「〇〇%は経費になりません。」は正しいのでしょうか。
結論を先に書いておくと、適当な割合で否認することは、法律上何の根拠もありませんから、
もし調査官にこのような否認指摘を受けても、受け入れる必要はまったくありません。
もちろん、このような指摘割合に根拠があるとか、もしくは受け入れた方が得などといった場合は別なのですが・・・
個別に「これはダメ」などと否認することを「実額課税」といい、
一方「〇〇%は経費になりません。」などと否認することを「推計課税」と呼んでいます。
法人税法第131条(推計による更正又は決定)
税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合を除き、その内国法人の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準を推計して、これをすることができる。
法律では推計課税を認めていますが、
これが認められているのは、「帳簿書類がない」「税務調査を拒否する」など、
実額による課税ができない場合に、推計課税する必要があるからなのです。
つまり、推計課税は税務署がいつでもできるものではなく、実額課税ができない場合の措置といえるのです。
ですから、税務調査を受け入れ、帳簿書類等を提示しているにもかかわらず、
推計課税で否認指摘してくる調査官の主張を、受け入れる必要などまったくないのです。
この点はぜひ知っておいていただきたいポイントです。
「交際費が同業他社と比べて多額なので、半分にします。」という否認指摘、これはどうなのでしょうか。
つまり、そもそも(接待)交際費は、同業他社と比べて多額なのであれば、
本当に経費(損金)にならないのか、というポイントです。
法律では、法人における交際費をこのように定めています。
租税特別措置法第61条の4(交際費等の損金不算入)
3 第1項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。
つまり交際費とは、「法人が支出する経費」のうち、
「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」を指します。
ですから、個人的な支出は経費(損金)にならないのは当然として、法人が支出するものであって、
それが取引先などを接待するものであれば、経費になるというわけです(ただし、損金になるための上限金額は設定されています)。
ここから明らかであるとおり、交際費は何も同業他社と比べて高いからダメというわけではないのです。
では、なぜ調査官が同業他社と比べたがるかというと、役員報酬や役員退職金と話がごっちゃになっているからです。
役員報酬や役員退職金は、「法律的に」同業他社と比べて異常に高い場合には、損金にならないという規定があります。
法人税法施行令第70条(過大な役員給与の額)
内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与の額が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額
交際費については同業他社と比べて多額であっても何ら問題ありませんから、 調査官の誤った指摘にはきちんと反論しましょう。