まず、税務調査は通常、事前に通知があって行われるものですが、この点については「法律の改正は」行われていません。
税理法第34条(調査の通知)
税務官公署の当該職員は、租税の課税標準等を記載した申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)を調査する場合において、当該租税に関し第30条の規定による書面を提出している税理士があるときは、あわせて当該税理士に対しその調査の日時場所を通知しなければならない。
この法律に規定されている通り、顧問税理士がいる場合は、
「あわせて当該税理士に対しその調査の日時場所を通知しなければならない。」
とされています。
この「あわせて」が問題になるのですが、税務署が物理的に、会社と顧問税理士の両方に「同時に」通知(連絡)することは不可能ですから、
以前は顧問税理士に先に連絡が入ることが多かったのですが、現在は会社(納税者)の方に先に連絡がいくようになりました。
この点、税務署から連絡があった場合は
「顧問税理士にすべて任せているので、そちらの方に連絡してください」
と答えていただきたいです。
ここからさらに注意点なのですが、
税務調査が開始されると、通常税務署との連絡は顧問税理士が行うものです。
しかし、調査官の中にはあえて税理士に連絡せず、会社に直接連絡したり、
また突然会社に訪問したりするケースが散見されるのも事実です。
ここで大事なことは、税務調査の事前連絡のみならず、税務調査の期間であっても、
常に「顧問税理士にすべて任せているので、そちらの方に連絡してください」、「直接連絡されてもわかりません」という、
一貫した対応を続けていただきたいということです。
税務署と直接やり取りすれば、いつの間にか大きなリスクを抱えることもあるので、ぜひ注意していただきたいと思います。
税務調査の途中で、調査官が直接会社に連絡したり、突然訪問したりする理由のほとんどは、
顧問税理士がいないところで、税務署に有利な発言を引き出したり、証拠を収集したいという思いにあります。
調査官が顧問税理士のいないところで行動を起こすということは、
税務署の立場で考えてみると、顧問税理士がいない方がありがたい、ということです。
つまり、顧問税理士がいた方が困るというわけです。
これを納税者の立場から考えてみると、顧問税理士がいないと困る、というふうにも理解できるわけです。
例えば実例として、顧問税理士がいないところで、突然調査官が訪問してきて、さまざまな事情を聞かれた挙句、
「この書面にサインしてください」と言われ、言われるがままにサインしたところ、
納税者にとって圧倒的に不利な書面だったというケースがあります。
このような調査官の行為が「違法か」と問われると、違法ではありません。
なぜなら、顧問税理士が不在の場合でも、
税務署は納税者と直接連絡・対面できるからです(あくまでも税理士は、納税者の「代理人」という理解です)。
しかし常識的に考えてみると、税務署との正しい対応方法がわからないから顧問税理士を雇っているわけで、
ここで顧問税理士に不在の中、何か税務署に行為を求められたら、
自分たちによって有利か不利かもわからずに、対応してしまうというのが現実でしょう。
だからこそ、税務署からの連絡や訪問は対応すべきではなく、すべて顧問税理士に任せてしまった方がいいのです。
これは、無予告調査でも同じことがいえます。
税務調査は通常、事前に通知があるのですが、事前の連絡なく、突然税務調査に入られることもあります。
このような場合、顧問税理士としてはできる限りその日に対応したいのですが、他の予定等もあり、対応できないことも多くあります。
調査官は、
「会社内の事情さえわかればいいので、顧問税理士がいなくても税務調査をさせてください」
と執拗に食い下がってくることがあります。
そこで、「まあ顧問税理士には後で報告すればいいか」と判断してしまうと、
あとで取り返しのつかないことになりかねないのです。
突然調査官が来た場合は、絶対に顧問税理士に連絡するとともに、
税務調査をその場で受けるか受けないかの判断は税理士に任せていただきたいと思います。
これが納税者の皆さんにとって最善の方法なのです。