税務調査は通常、1~2週間前に連絡があり、
「○〇日に税務調査に行きたいのですが、ご都合はどうですか?」
と事前に調整があるものです(無予告調査と呼ばれる調査があることは先日書かせていただいた通りです)。
さて、この事前連絡なのですが、税務署内のルールが変わりました。
これは地域や事情によって違うので一概には言えないのですが、今までは
税務署から税理士に連絡 → 会社と日程調整
だったものが、逆になり
税務署から会社に連絡 → 税理士と日程調整
という形に、10月から全国的に変わったのです。
(今までは地域によって違ったので、統一された、という方が正しい表現です)
実はこのルールに関して、税理士としては非常に不満です。
なぜなら、本来は会社に税理士がついている以上、税務署からの連絡はすべて、先に税理士にしてもらいたいからです。
会社からすれば、税務署から連絡があっても対応に困るはずです。
「そんなこと言われても・・・税理士がいるんだからそっちに連絡してくれよ」
と思うのも当然です。
だからこそ、税務調査の事前連絡も、税理士としては先に連絡を受けたいのですが、実態は違うというわけです。
税務調査の事前連絡が先に会社にいっても、会社側が対応しなければならないかというとそうではありません。
税務署から連絡があった際には顧問税理士がいるのであれっば、こう答えてください。
『税金に関わる全てのことは顧問税理士に任せているので、そちらに連絡してください』
会社側としてこのように税務署に伝えると、税務署は顧問税理士に連絡しなければならない、というルールになっています。
逆にいえば、このように伝えなければ、
あたかも税理士がいないかのように取り扱われるケースも考えられるので注意が必要です。
税務署に上記のように伝えるのは、簡単なことだと思いますので、ぜひ社内で周知徹底してください。
税務調査が始まった段階では、当然税理士が立会うわけですが、1~2日で終わらない税務調査も多くあります。
帳簿や請求書を見せても、その場ですべてが解決するわけではありませんから、調査官が税務署内で検討する場合や、
こちらが資料を追加で提出しなければならない場合などは、「後日また会って検討しましょう」となるわけです。
しかしここで、税理士抜きで経営者に会って事情を聞こうとする調査官もいるのです。
税理士がいると、経営者は本当のことを言わないと思っているのでしょう。
調査官は疑うことが仕事だとはいえ、タチが悪い行動でもあります。
「税理士先生はお忙しいようですから、社長と我々だけで協議しませんか?」
「近くまで寄ったのですが、今から時間とれますか?」
「税理士先生がいなければ本当のことを話してくれますよね?」
調査官がなぜこのような行動をとるのかというと、
税法(税金の仕組み)のことがあまりわからない経営者と話して、
税務調査を税務署有利に進めたい、と考えているからなのです。
このような調査官の誘いに乗ったばっかりに、不利な発言をしてしまうリスクばかりか、
不利なことを書いた書面にサインをさせられてしまうケースもあります。
このような書面にサインをしてしまえば、サインした書面を証拠に、悪いことをやったという意識がまったくなくても、
いつの間にか多くの追徴税額を課されることもあるのです。
このような状況に陥らないようにするには、税務調査の途中で調査官から直接連絡があっても、こう伝えることです。
『税金に関わる全てのことは顧問税理士に任せているので、そちらに連絡してください』
これは税務調査の事前連絡があった場合とまったく同じ言葉です。何も難しいことはありません。
税務調査では税理士がいない方がいい、と調査官が考えているということは、
逆に考えると、税務調査では税理士がいるだけで有利、ということでもあるのです。
何があっても税理士不在の状況を作らないでください。