税務調査を受けた場合、結果として3つのパターンが存在します。
以前は法定化されていなかったのですが、税務調査に関する改正で3つが法定化されました。
①申告是認(しんこくぜにん)
「税務調査を行いましたが、申告した内容に誤りがありませんでした。」という場合です。
経営者にとってみればもっとも嬉しい結果です。
②修正申告
税務調査で誤りが見つかった場合、修正申告になることの方が多くあります。
「修正申告=誤りの指摘に納得して提出するもの」です。
③更正
更正とは税務調査の結果、誤りが見つかり、「こう直しますよ、追徴税額はこれだけになります」という税務署からの処分です。
修正申告と違うのは、会社(経営者)が納得していないということです。
さて、税務調査で更正(処分)となる場合、
税務署(調査官)はその処分をする理由や追徴税額の金額を説明しなければならなくなりました。
つまり、説明もなく処分はできなくなったのです。
これを「理由の附記」と呼んでいます。
実は今でも同じ制度はありました。
しかし以前は、青色申告者に対する更正だけに理由の附記がなされていました。
つまり、白色申告であるとか、青色申告制度がない税目、たとえば消費税や相続税には、
更正という処分をされても、理由の附記がなかったのです。
法改正により、今後は納税者にとって「不利益な処分にはすべて理由の附記が必要」とされました。
これにより、税務署(調査官)も更正する場合には、
処分の理由を明確にする必要があるため、処分に対して慎重にならざるをえなくなったのです。
これにより、税務署からの安易な処分は、今後急激に減るものと予想できます。
また、これは重加算税についてお適用されます。
通常、税務調査で否認されると、本税(本来払うべきであった税額の不足分)に過少申告加算税10%が上乗せされるのですが、
重加算税になると35%もの上乗せになります。
さらに、重加算税になると延滞税(利息分)の計算も高くなりますので、まさにダブルパンチとなるわけです。
重加算税の要件は、簡単にいうと「仮装または隠ぺい」していたことです。
「仮装または隠ぺい」とは、たとえばこのような行為です。
「隠ぺい」:二重帳簿の作成・売上除外・架空仕入・架空経費・棚卸資産の除外・雑収入の除外等
「仮装」:取引上の架空名義の使用・通謀虚偽表示(民法94条1項)・虚偽答弁等
簡単にいえば、税金をごまかそうと悪いことをしていれば重加算税が課されるというわけですが、実態はそうではありません。
法人への税務調査が行われた件数のうち、20%に重加算税が課されています。
20%もの法人が「仮装または隠ぺい」行為をしていたとは到底考えられません。
修正申告を提出したことで税務調査が終わって、後日税務署からの通知を見てみると、
なんと重加算税の通知だったという話もあるくらいです。
重加算税も税務署からの「処分」にあたります。
つまり、以前は、重加算税の処分をする場合、税務署からその理由などを提示する必要がなかったのです。
そのため、「仮装または隠ぺい」などしていなかったとしても、税務調査で重加算税を課されるケースが多くあったのです。
すべての処分に理由の附記が必要になったことにより、
重加算税の処分をする場合にも、通知書に理由を載せる必要が生じました。
これによって、今まで曖昧な基準で処分されていた重加算税も、
今後は税務署も理由の附記が必要ですから、安易な処分はしてこないはずです。
「理由の附記」とは、納税者によって非常に有利な法改正だったのです。ぜひ覚えておいていただきたい制度です。