以前ニュースとして新聞記事でも大きく取り上げられていましたので、すでにご存じの方も多いかと思いますが、
神戸にある「川崎汽船」という造船会社に税務調査が入り、
その中で極めて不当な税務調査が行われたということで、争いになっていた事件がありました。
「大阪国税局が威圧調査 不当性認め所得隠し指摘取り消し」
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201209070058.html
各記事の一部を引用すると、下記のような内容です。
「国税局の担当職員が川崎汽船や造船会社の従業員らを調べた際、「(従業員らと合意した事実関係を記す)確認書を作る時、威圧的に言われ、国税局の主張に沿う内容の確認書に押印した」「『そのまま書いて』と、国税職員が作った文案のまま確認書に署名するよう誘導された」「『この回答は違う』『この会社は法人の体をなしていない』と怒鳴られた」などと訴えた。」
「「国税側の認識に沿うような確認書を作成し、一部事実に反する内容の回答を引き出した」「隣室の会議に支障があるような怒声を発した」などと指摘。処分を取り消し、6億円が同社に還付された。」
この事件はまだ詳細まで公開されていませんが、
主旨としては「法律の解釈論での争い」ではなく、「税務調査の手続き」に関するものです。
つまり、税務調査というものの範囲を超えて、「威圧」された税務調査ということで、「不当」と判断されたのです。
ちなみに、税務調査に関連するこのような事件で、法人(納税者)側が勝つというのは、かなり珍しいものです。
こういう記事を読むと、税務調査というものが怖くなるのですが、
ここまでの税務調査はほとんど無いとはいえ、やはり税務調査をしている調査官も人間ですから、
性格などによっては、「威圧的な」調査官がいるのもまた現実。
税務調査とはあくまでも、法人(納税者)の理解と協力を得て行われる「任意」の行為であって、
税務調査においては、税務署(調査官)と法人の立場は対等でなければなりません。
この点を勘違い(履き違えている)調査官がいれば、こちらから「言動には気を付けてください!」と主張しても問題ないのです。
税務調査において、調査官に「これは間違っていますね」と指摘されたケースで、その内容や根拠に納得いかない場合があります。
このような際には、当初からお互い冷静に、意見の食い違いを埋めていくべきなのですが、
この協議が平行線のまま進むことも少なくありません。
つまり、こちら(納税者)としては、調査官の言い分に納得できないケースです。
このようなケースでは、最終的に調査官も落としどころを見つけることができず、 下記のような「威圧」をかけてくることもあります。
①「税務調査が長引きますよ」
経営者が嫌がる典型的な言葉です。ただでさえ得することがない税務調査で、
さらに時間とられると思うと、誰でも心が折れそうになります。
税務調査を不当に長引かせようとすることは、当然税務調査の不当性があります。
②「反面調査に行きますよ」
反面調査とは、取引先や銀行に対して税務調査を行い金額などを確かめる、税務調査の一環です。
今までは反面調査に行かなかったのに・・・
反面調査をかけて取引先・銀行との信用・信頼関係を失墜させることを前面に出して、調査官が威圧してくることもあります。
③「修正申告しないのであれば、税額が増えますよ」
最終的に、
「修正申告であればこの金額ですが、更正となると全部チェックしなければならないので、税額は増えます」
と言ってくる調査官もいます。
これら調査官の威圧的な言動があった場合は、
冷静に「今言った言葉は、私を威圧しているのですか?」と確認する必要があります。
「威圧と誘導」に屈しないためには、経営者としては、下記のポイントを知っておかなければなりません。
・税務調査はあくまでも任意であること
・質問検査権の範囲
・更正と修正申告に税額等の違いは、法的にないこと
脅しに屈しない理論武装も必要だということです。