税務調査に入られやすい会社には、入られやすくなる理由や、ある程度パターンがあるのですが、
実は税務調査自体の目的ではないのに、税務調査に入れることがあります。
わかりにくいポイントなので、しっかり説明したいと思います。
税務署は常日頃から、脱税者(社)を捕まえるために、あらゆる面から情報収集を行っています。
例えば、税務調査を行うと、その取引先や取引金額を情報として残しています。
また、税務調査に入らなくても、雑誌・チラシの広告から情報収集したり、街を歩いていた際に見かけた駐車場の台数から、
持ち主が確定申告を適正にしているのかまでチェックしているのです。
つまり、税務署にとっては、常日頃から収集している情報が大事であり、
その情報を取るためならかなりの努力をするというわけです。
そこで行われるのが、「情報収集のための税務調査」です。
ある会社に税務調査に行くのですが、その会社が適正な申告・納税をしているのかをほとんどチェックもせずに、
その取引先や顧客データを収集しているのです。
経営者からすると、本当に迷惑な税務調査なのですが、実際にはこのような税務調査もあるのです。
具体的には、
・保険の代理店のところに税務調査に入って、顧客リストを情報収集
→ 節税目的や資産家を洗い出しています。
・証券会社やFX会社
→ 副収入を得ているのに確定申告していない人を洗い出しています。
・不動産仲介会社
→ 不動産を売却・購入したのに確定申告していない人を洗い出しています。
これらは例示であって、他にも情報収集のための税務調査は行われているのです。
もちろん税務署は、「情報収集のための税務調査なので、御社には関係ないですよ」とは言ってくれませんので、
税務調査が始まってみないと、「これはまさか情報収集のためだけなの?」ということはわかりません。
時間が取られて迷惑な反面、自社に追徴税額がなどがあまり発生しない分、
少し喜んでもいい種類の税務調査なのかもしれません。
また、上記以外にも、「広域調査」と呼ばれるものがあります。
広域調査とは、いくつかの税務署の管轄にまたがって、同時に行われる税務調査のことです。
具体的には、親・子会社や関連会社がいくつかあり、その登記場所がバラバラの場合に、
それらの会社に一斉に税務署(調査官)が入り、税務調査を実施するケースです。
もちろん、関連会社がいくつかあるからといって、絶対に広域調査が行われるというものではありません。
しかし、広域調査が行われる場合は、そのほとんどが無予告調査(事前に通知のない税務調査)になります。
というのも、事前に連絡をすると、関連会社同士で数字を合わせたり、
税務署には見せられない資料を破棄したりする可能性が高くなるからなのです。
広域調査はかなりやっかいで、複数会社、しかも実質的には同じ経営者である法人に、
同時に税務調査をされるわけですから、対応するだけで大変なことになります。
また、似たような税務調査の種類に「同時調査」があります。
同時調査とは、2つ以上の税目の税務調査を同時並行して行われる調査のことを指します。
税務署は、法人税=法人課税部門、所得税=個人課税部門、相続税=資産課税部門など、
税目(税金の種類)ごとに部署が分かれていて、通常は1つの部署だけで税務調査を行うものなのですが、
何か理由がある際には、部署が合同で税務調査を実施することもあります。
これを同時調査と呼ぶわけです。
また、会社に対する税務調査であっても、法人税のみならず、消費税や源泉所得税、印紙税なども同時に調査の対象となり、
このような場合も同時調査と呼ばれることがありますが、これは一般的な税務調査だと思っていただいて結構です。
法人税と所得税の部署が合同で行う税務調査の場合、過去に個人事業主であった方が、
法人を設立(いわゆる法人成り)していたという経歴があり、
法人税も所得税も同時に調査しなければならないケースが多いようです。
また、経営者が亡くなられた場合に、相続税には会社の株式の評価などが絡む場合は、
相続税の調査のみならず、法人税の調査も同時に行われる場合もあります。
税務調査にもいろいろな種類のものがあり、一筋縄でいかないということだけでも知っていただければと思います。