経営者にとって税務調査はいい気分がするものではないと思うのですが、税務調査を受けたことがある人の多くはこう言います。
「調査官というのはなぜあんなに感じが悪いんですか?
いくら税務調査といっても、あたかも税金をごまかしているのを前提に来なくてもいいでしょう!」
このような印象は若干人によって感じ方が違います。
調査官も人間ですから、人によって言動も感情も違うわけです。しかし、調査官に対して良い印象を持つ人が少ないのも事実です。
ここで知っていただきたいのは、調査官は基本的に「性悪説」に立って税務調査を行っていますし、
それは仕方のないことだとあきらめることが必要です。
この問題を考えてみてください。
100円ずつを持つ5人が1組になり、100円以内で自分の好きな額だけ出資できるとします。
5人の出資合計額は2.5倍に増え、それを全員に均等に振り分けるとします。
さて、あなたはいくら出資しますか?なお出資する金額は100円以内であれば自分で決めることができ、
他の4人と出資金額の相談はできません。また他の人に対して意見(例えば「~円出すように」など)をすることはできません。
この問題は経済学でいう「フリーライダー(ただ乗り)」を表した問題です。
答えは「0円」です。
自分がお金を出さなくても、誰かがお金を出してくれればそれだけで分け前があるのですから。
この問題からわかることは、「税金を払わなくても公共サービスを受けることができる」と考えるのが普通ということです。
このように、納税意識は基本的に低いことを前提に税務調査が行われていますから、
調査官は性悪説に立っていると考えるのが正解なのです。
この延長線上にある考え方が「一罰百戒」です。
中小企業ではあり得ませんが、なぜか有名企業・有名人に税務調査が入り、
その結果修正申告でもその内容(追徴税額など)が報道されることがあります。
これは国税が情報をリークしているからと考えられるのですが、国税側の考えは「一罰百戒」。
つまり、「悪いことをすれば税務署はわかるんですよ」という戒めを多くの人に与えることを目的にしています。
調査官や税務署の対応が悪いと言ってあつくならず、税務調査は常に冷静に対応すべきなのです。