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決算期変更を活用する

 役員報酬は毎月「一定金額」であることが原則です。
例えば、毎月50万円支給していた役員報酬を、突然来月から100万円に増額することなどは認められていません。
これは、法人の利益調整のために役員報酬の増減をさせないためとされています。

こう考えると、銀行との対面上の問題などで、役員報酬を下げて、法人の利益を増やす分には問題ないのかと考えそうなものですが、
役員報酬を下げるのも「業績悪化改定事由」といって、かなりの理由・要件が必要とされています。
要件については、国税庁のホームページに載っています。

「役員給与に関するQ&A」(平成24年4月改定)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf

では、役員報酬を増減させるためにはどうすればいいのでしょうか。
もっとも基本的なパターンとしては、決算期末日から3ヶ月以内に株主総会を開催し、そこで役員報酬の支給額を変更することです。
つまり、期が変われば当然に役員報酬を変更することができるというわけです。

では、業績が極端に悪くなったわけではない。決算期が到来するまでにまだ数ヶ月ある。
しかし、何とかして役員報酬を増減させたい場合はどうすればいいのでしょうか。

実はたった1つだけ、簡単に役員報酬を増減させる方法があります。
それは、「決算期の変更」です。

たとえば、3月決算法人で5月に役員報酬を決めたとしましょう。
しかし、年末にかけて思ったより利益が計上されており、役員報酬をもっと上げたいと考えたとすると、
3月決算を12月決算に変更するのです。
こうすれば、年明けから役員報酬を変更することが可能です。
決算期(月)の変更は登記も不要で、定款だけ変更して税務署に届け出をすればいいので、手続きも簡単にできます。
また、決算期を変更しても、税務調査に入られやすくなるという事実はありません。
ただし、1期分だけ1年より期間が短くなってしまいますので、
決算を締める作業等は手間になりますので、その点はご注意ください。
決算期変更は活用することもあると思いますので、ぜひ覚えておいてください。

また、役員報酬を増減させるうえで、注意しておかなければならないことは、
退職金を見据えた役員報酬額の設定になっているかどうかです。
特に、役員報酬を下げる場合に注意が必要になります。

なぜ退職金と役員報酬に関連性があるかといえば、退職金は一般的にこのような算式で計算されることになっています。

役員退職金=最終月額報酬×在任期間×功績倍率

在任期間というのは、役員に就任してからの年数。また功績倍率とは、
一般的に社長代表取締役で3倍程度といわれています。
在任期間と功績倍率が固定だとすると、退職金は実際のところ、最終月額報酬で決まるともいえるわけです。

実際の例でこういうことがあります。
過去法人の業績が良かった頃は、社長も役員報酬を多くとっていた。
しかし、最近業績が悪化し、銀行借入の必要性からも社長の役員報酬を極端に低くし、法人に利益がでるようにしていた。
しかし、社長の体調が悪化し、退任しなければならない状況になってしまった。
ここで、最終月額報酬が10万円など、かなり低い金額になっていると、30年に働いていても、
10万円×30年×3倍=退職金900万円
ということになってしまいます。
もっと退職金を支給したいという要望があっても、実際のところ、税務調査で否認されるリスクを考えると、
これ以上大幅に増額して退職金を支給することは難しいこともまた事実です。

日本の税制では、退職金に課される税金は安くなるため、
退職金を多く支給することが節税メリットにもつながり、役員退任後の生活の糧にもなります。
こう考えると、法人のことを考えて役員報酬を低めに設定してしまったことが、
退職金を多く支給にできないという不測の事態を招く結果にもなり得るわけです。

あまり考えたくないことでしょうが、現実には死亡というリスクも考えなければなりません。
役員報酬を下げた瞬間に発生するリスクというのもあるのです。
役員報酬についてあまり増減させず、現時点での適正額を慎重に考える必要があるのです。

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