税務調査にはいろいろな種類のものがありますが、よくあるのが今回取り上げる「反面調査」です。
そもそも、「反面調査」とは何でしょうか。
反面調査は、税務調査に入った会社・個人事業主の取引先・銀行等との取引実態や金額を正確に把握するために行われるものです。
反面調査は、法律でも認められています。
しかしその一方で、反面調査を行われてしまっては、取引先や銀行などとの関係性を壊される可能性があるのも事実でしょう。
では、なぜ反面調査が法律で認められているのでしょうか。このような2つのケースを考えてみましょう。
=ケース1=
税務署がある会社に税務調査に入りました。
しかし、その会社は脱税しているため、バレないように請求書や領収書などを偽造しています。
調査官は数枚の請求書・領収書が偽造・ねつ造されているのを見つけました。
しかし、どの書類がおかしいのか、まだまだある膨大な資料を全部チェックすることは実質不可能に近い状態です。
→このようなケースでは、提示した書類がもう信じられる状況ではないのですから、
調査官としては取引先などに反面調査をしなければ、正確な金額がわからないというわけです。
ではこのようなケースはどうでしょうか。
=ケース2=
税務署がある会社に税務調査に入りました。
しかし、その会社は以前、ビルの1階に入っている飲食店で火事があり、
消防車に消火活動の中で、請求書や領収書などがすべて水浸しになりました。
まったく悪意がなく、完全に被害者なのですが、
結果的には税務調査で提示しなければならない請求書や領収書などがないわけです。
→このようなケースでは、調査官としては何も確認しようがないわけですから、仕方なく反面調査を行わなければなりません。
では、反面調査は「どんな場合でも」認められるのでしょうか。
例えば、元請けと下請けのような取引関係であれば、反面調査によって元請けからの信用がなくなれば、
以後仕事がもらえなくなり、本当にそれだけで倒産することもあり得るでしょう。
取引先の担当者は、税務署が来たというだけ、「何か悪いことをやっているんじゃないか?」と疑い始めるわけです。
ただし、反面調査が法律上認められているといっても、無制限に認められているわけではありません。
反面調査を無制限に認めてしまうと、
「反面調査に行きますよ!行かれたくないなら・・・」
なんてことを言う調査官がいたとしても、反論することができないわけですから、これではおかしいわけです。
まず知っていただきことは、反面調査を定める法律には、この文言が入っています。
「調査について必要があるときは」
そうなのです。
反面調査をする「必要があれば」実施してもらえばいいのですが、「必要がなければ」反面調査はできないのです。
では、「反面調査が必要なとき」とはどんなときなのでしょうか。
それは前回の2つのケースで書いたように、請求書や領収書の信頼性がないときや、保存できていないような場合のはずなのです。
つまり、請求書や領収書をきちんと調査官に見せて、金額も日付も確実にわかる場合は、
そもそも反面調査に行く「必要がない」のです。
当然といえば当然なのかもしれませんが、
税務署が反面調査をおこなうことで、納税者からのクレームが多数あることも事実です。
そのため、税務署(国税局)の内部には、反面調査に関する3つの「規則」があります。
【税務署内の規則】
①昭和36年7月14日国税庁長官通達
「いたずらに調査の便宜のみとらわれ、納税者の事務に必要以上の支障を与えることのないよう配慮し、ことに反面調査の実施に当っては、十分にその理解を得るよう努める」
②昭和51年4月1日税務運営方針の一部抜粋「調査方法等の改善」
「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであることに照らし、一般の調査においては、事前通知の励行に努め、また、現況調査は必要最小限にとどめ、反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」
③平成12年7月個人課税事務提要、平成13年7月法人課税事務提要
「取引先等の反面調査を実施しなければ適正な課税標準を把握することができないと認められる場合に実施する」
これら3つの規則があるにもかかわらず、守らない調査官がいれば、
「私は反面調査に規則があるのを知っていますよ。守ってください。」と主張することができるのです。
ぜひ頭の隅にでも残しておいて欲しい情報です。