毎年秋になると、国税庁から税務調査に関する情報が公開されるのですが、報道されている内容を見てみましょう。
「法人の税務調査件数27%減 国税庁」 (2013/10/31 20:36)
今年6月までの1年間(2012事務年度)の全国の法人に対する税務調査件数が9万3千件で、前年度から27.4%減ったことが31日、国税庁のまとめで分かった。調査の手続きを定めた国税通則法が1月に改正され、1件当たりの調査期間が平均2.6日延びたため。統計がある1967年度以降で2番目の低水準となった。
申告漏れを指摘したのは6万8千社で、指摘額は総額9992億円(15.0%減)。追徴税額は2098億円(3.6%減)だった。
このうち仮装・隠蔽を伴う悪質な所得隠しの指摘は1万7千社で、認定額は2758億円(9.6%減)。「調査件数は減るため、大口、悪質な不正が想定される法人を重点的に調査した」(同庁)といい、1件当たりの所得隠しの認定額は1612万円(33%増)と過去最高だった。
法人消費税の申告漏れは5万社で、追徴税額は474億円。不正還付は542社で、追徴税額は約13億円だった。
また、個人事業主に対する税務調査の件数も3割減となっており、
去年から今年前半にかけての税務調査の件数が激減していることがわかります。
これは、記事にもあるように、税務調査の手続きが今年1月から大幅に改正されたことにより、
税務署内の事務量が増えたことに起因しています。
こう考えると、今後もさらに税務調査の件数を減ることが予想できます。
税務調査の件数が減ることにより、国税側としては今後、
・不正が見込まれそうな納税者に的を絞る
・過去に申告是認(調査で誤りがなかった)の納税者に対する税務調査頻度を下げる
・税務調査1件あたりの日数を減らす
という方向に動くことは間違いありません。
これは納税者側から考えると、良い方向転換でしょう。
真面目にやっていれば、今後税務調査に入られる可能性が減るということなのですから。
税務調査件数の減少は、税務調査の手続きが今年1月から大幅に改正されたことが原因なのですが、
ではその改正内容とはどのようなものでしょうか。
税務調査の件数が大幅に減少するくらいの改正ですから、ぜひ知っておいてほしいものです。
日経新聞に、この改正内容がまとまっていましたので、一部引用しながら解説していきましょう。
なお、改正内容は多岐にわたりますが、もっとも変わった部分のみ取り上げます。
「今年春、税理士の永田理絵氏は、税務調査を受けた顧問先企業が受け取った更正通知書を見て驚いた。課税額を増やす理由や税額計算の過程が「5枚にわたり詳しく書かれていた」(永田氏)ためだ。
「従来は(行政上の紛争である)争訟にならないと当局はここまで詳しく開示しなかった」。国税不服審判所の民間登用審判官の経験もある永田氏はこう話す。
これまでの通知書は、なぜその法令に当てはめて増額するのか税額計算について「説明が不十分なものが目立った」(租税訴訟学会理事で税理士の藤曲武美氏)。
詳しい理由を知ろうと「異議申し立てをする場合もあった」(複数の税理士)という。」
このように、税務調査で更正処分となった場合は、
「理由の附記」と呼ばれる項目が強化されており、納税者に有利な改正がなされています。
「当局は従来、修正申告を促すケースが圧倒的に多かった。もちろん争訟も視野に入れて調査していたが、実際は「立証が大変」(元特別国税調査官で税理士の岡田俊明氏)。修正申告は納税者の自発的行為なので、修正すれば納税者はその件を直接争訟できなくなり、当局にとっても都合がよかった。納税者側も「当局と争うのは避けたいと考える人が多かった」(藤曲氏)。だが法改正後は、「当局が修正申告を求めることに慎重になってきた」(ある税理士法人)面があるという。税務調査の終わりに修正申告を求める場合、最終的に増額更正を通知するときと原則同じ税額、理由を示して説明する必要が出てきたからだ。争訟まで想定した説明の必要は「修正申告を求める段階まで拡大」(志賀氏)している。」
税務調査では、税務署が圧倒的に有利で、納税者が不利と言われ続けてきましたが、
この点改正により、かなり納税者側にも有利な部分が出てきたというわけです。
調査官もこの改正により、強硬的な態度を軟化させるケースも増えるものと思います。
この改正は納税者寄りだと考えて間違いありません。